相場の読みが外れて証拠金が減るのを見ているだけでは、勝ち組FXトレーダーにはなれません。大きな損失を出すと、取り返すのも容易ではありません。
損失をどこで抑えて、あるいは損失をどこまで許して次のトレードに移行するのか。負けを最小限に食い止めることが、FXで勝つために必要です。
そこで、損切り(ロスカット)の大切さや、基準(ルール)、目安となる数値、最後にトレードする際の注文方法について確認しましょう。
損切りでリスク緩和
FXでは、リスク管理に対する意識を持つことが、大切な要素の一つです。
「損失はここまでにしておこう」と、負け方を決めます。つまり、どのくらいの損失が出たら決済するか、事前に決めておきます。
損失が出たら決済して取引を終えることを、損切り、またはロスカットと呼びます。
投資家の資金力やスタンスなどはそれぞれですが、一定のルールを決めて徹底して実行することが大切です。
損切りの基準を決める
損切りの基準は、投資家ごとに異なります。しかし、少々の連敗で破産してしまうような基準では、相場の世界で生き残ることは難しいでしょう。
連敗する場合でも相場で生き残り、好調なときにしっかり利益を確保できるような基準を考えます。
許容する損失額の例
短期トレードの場合、1回の損切りで失っても良い金額は、証拠金の1%~2%程度以内でしょう。
1回のトレードで2%よりも大きな損失を許容する場合、極めて高い勝率や強靭な精神力が要求されるかもしれません。
1トレードの損失許容額
■自己資金が10万円の場合
1トレードの損失許容額は1,000円~2,000円程度以内
■自己資金が100万円の場合
1トレードの損失許容額は1万円~2万円程度以内
100万円の自己資金の場合、1トレードで4万円くらい負けても大丈夫のような気がするかもしれません。
4万円ならば、20連敗しても、まだ自己資金は残っています。そして、20連敗もするか?と考えると、そんなに連敗しないだろうからです。
しかし、実際には20連敗しなくても、損した額を取り返すのは容易ではありません。
損失を取り返す難しさ
例えば、100万円でトレードを始めて、50万円にまで減ってしまったとしましょう。資金は50%の減少です。
その50万円を使って、元の100万円まで復活させる場合、利益率は100%必要です。
- 100万円→50万円(50%減)
- 50万円→100万円(100%増)
減少するときは50%なのに、元通りにするには100%必要です。100%の利益、すなわち自己資金を2倍にするのは、大変なエネルギーが必要です。
そもそも、100%の利益率を達成できるならば、50万円損しないでしょう。
また、50万円を失った時点で、大きく動揺しているはずです。すなわち、損失を計上する前のような精神状態ではありません。
損失を計上しているという事実と、負けが込んで精神的に揺さぶられている状況が重なって、損失を回復するのはとても大変になります。
グラフで確認
では、損失を計上するとき、元の資金に戻すには、どれくらいの利益率が必要でしょうか。グラフで確認しましょう。取引開始時の資金は、100万円です。
上のグラフで、横軸は損失額です。そして、縦軸は、元の資金に戻すための利益率です。
縦軸は、最大2,000%まで書いてあります。2,000%ということは、20倍です。100万円の資金の大半を失うと、2,000%級の利益率が必要になります。
1,000%以上の率で資金を増やす能力があるなら、そもそも90万円以上の資金を失うことはないでしょう。また、ここまで損すると、冷静にトレードすることは不可能なのでは?
よって、損失額を50万円までに限定して、グラフを改めて見てみましょう。下の通りです。
グラフの線を見ていただきますと、直線になっていないことが分かります。二次関数に近い感じです。
これは何を意味するか、実際の数字で確認してみましょう。
表で確認
10万円損する場合、元の資金にするには11.1%の利益率でOKです。
20万円損する場合、10万円の2倍だから22.2%の利益率でOK…とはならず、25.0%の利益率が必要です。数字が大きくなっています。
すなわち、損失は小さければ小さいほど、回復可能性が高くなります。損失額と、回復に必要な利益率の関係の表は、以下の通りです。
損失額 | 回復に必要な利益率 |
---|---|
10万円 | 11.1% |
20万円 | 25.0% |
30万円 | 42.9% |
40万円 | 66.7% |
50万円 | 100% |
トレードする理由は、資金を増やしたいからです。しかし、資金を増やしたいならば、まずはお金を減らさないことが大切だと分かります。
トレード手法による損切りの目安
上は、自己資金量とストップロスの関係を確認しました。次に、トレード手法とストップロスの関係を確認しましょう。
おおむね、下の表の関係があります。
トレード手法 | トレード期間 | 損切り幅の目安 |
---|---|---|
スキャルピング | 数秒から数分 | 数pips |
デイトレード | 数分から1日 | 30pips~50pips |
スイングトレード | 1日~数週間 | 50pips~100pips |
ポジショントレード | 数週間以上 | 数百pips以上 |
取引開始から終了までの時間が短くなるほど、損切り幅の目安も小さくなります。
スキャルピングの場合、利食い幅は5pips(5銭)~10pips(10銭)程度でしょう。そこで、損切り幅はそれよりも小さくなります。
このような小さな幅ですので、高いレバレッジで取引します。低いレバレッジでは、収益がなかなか増えないでしょう。
逆に、ポジショントレードの場合、利食い幅は数百pips(数百銭)~1,000pips(1,000銭)あたりになります。よって、損切り幅も大きくなります。
そして、レバレッジは小さくなります。利食い、損切りいずれの場合も大きな幅ですので、レバレッジを低くしないと、簡単に強制ロスカットになってしまいます。
チャート形状で損切りの位置を決める
次に、チャート形状と損切りの位置の関係を確認します。トレード手法によって千差万別でしょうが、以下の形は基本的な内容です。
買いの場合
青の曲線は、為替レートの動きです。上図の左側は、上がって下がって、再度上がった点Aで買いました。直近の底値を「谷」と呼びます。
買った後、為替レートが期待通り上昇すれば良いのですが、反落する可能性もあります。この場合、点Bで損切りします。点Bは、谷の少し下あたりです。
売りの場合
上図の右側は、下がって上がって、再度下がった点Aで売りました。直近の高値を「山」と呼びます。
売った後、為替レートが期待通り下落せずに反発した場合、点Bで損切りします。点Bは、山の少し上あたりです。
利食いの位置を決めるのは、とても難しいです。しかし、損切りについては、比較的明確な目安がありますので、分かりやすいです。
どのロスカット基準が最も大事?
以上、3つの損切り基準を考察しました。どれが最も重要でしょうか。
- 資金量を基準にする
- トレード手法を基準にする
- チャート分析を基準にする
最も重要なのは、おそらく資金量を基準にした損切りです。と言いますのは、資金が尽きたらトレードできなくなるからです。資金さえ残っていれば、トレードを継続できます。
そこで、損切りで迷ったら、資金量を中心に考えましょう。そして、より効果的に決済位置を決めるために、トレード手法基準やチャート分析基準を活用します。
なお、より正確に表現するなら、3つの基準を全て満たすようにしたいです。
資金量基準が重要だと言っても、手法やチャート分析の視点で見たら、とんでもない位置で損切りしていますよ!となったら、成功は難しそうです。
考え方の例として、以下が参考になるでしょう。
トレードリスクを最小限に
トレード手法やチャート分析を基準にすると、どうしても損失額が大きくなる場合、取引数量を小さくする(2万通貨取引したいけれど、1万通貨にするなど)。
取引数量が小さくなれば、損しても少額で済みます。こうすれば、3つの基準全てを満たせます。
損切りの注文方法
FXの注文方法には、いろいろな方法があります。
損切りは、予想と反対方向に相場が動いた場合の決済です。よって、逆指値注文が多くなります。
FXには、この逆指値注文が出来るパターンが複数あります。自分なりの『損切りルール』を決めたら、感情を入れずに機械的に反対売買しましょう。
あらかじめ損切りをするラインを決めて発注するパターンは、以下の注文方法です。
また、トレンドの後を追って注文価格も変化していく、決済専用の注文方法にトレール注文があります。利益を確実に確保したいという注文方法ですが、損切り注文にも利用されることがあります。
以上、リスク回避の手法としてご活用下さい。