FXで取引されている通貨ペア
外国為替では『お金』が取引されています。『A国のお金でB国のお金を買う』というような、A通貨とB通貨のやりとりです。
各国には、それぞれ自国で使われている通貨があります。日本では円、米国では米ドル、イギリスでは英ポンドなどです。その通貨を、世界共通の市場に持ち込んで(インターネット上)、自由に交換できる場所が外国為替市場です。
では、FXで取引されている通貨ペアには、どのような種類があるか確認しましょう。
主要通貨とは
最初に、活発に取引されている通貨を確認しましょう。下図は、契約や決済、保蔵など、国際通貨として取引量が多い通貨を示しています。なお、EUR(ユーロ)使用国に関しましては、別記事『EU加盟国とユーロ採用国について』でご確認下さい。
通貨別ごとの取引量の割合で示すと、以下の円グラフになります(BISからの引用)。
取引量が多い通貨を上位5位まで並べると、以下のようになります。
- USD(米ドル)
- EUR(ユーロ)
- JPY(日本円)
- GBP(英ポンド)
- AUD(豪ドル)
これらの通貨に、カナダドル(CAD)、スイスフラン(CHF)を加えた通貨が主要通貨とされ、『メジャー通貨』あるいは『メジャーカレンシー』と呼ばれています。
また、取引量が少ない通貨は『マイナー通貨』といいます。後にご案内しますが、取引量が少ない通貨も取り扱っているFX業者もあります。
通貨記号について
ここで、通貨の記号について確認しましょう。3文字で表記されますが、国際標準化機構 (ISO)の4217通貨コードで指定されています。
日本円の表記である【JPY】を例にとってみましょう。
- 左側の2文字『JP』は、国別のコードです。
- 右側の1文字『Y』は、通貨の名称です。
下表は、FXで取引されている通貨記号です。メジャー通貨と、よく目にするマイナー通貨の代表格を取り上げています。
通貨記号 | 国 | 通貨 |
---|---|---|
USD | 米国 | 米ドル |
EUR | ユーロ圏 | ユーロ |
JPY | 日本 | 円 |
GBP | イギリス | 英ポンド |
AUD | オーストラリア | 豪ドル |
CAD | カナダ | カナダドル |
CHF | スイス | スイスフラン |
NZD | ニュージーランド | ニュージーランド・ドル |
SEK | スウェーデン | スウェーデン・クローナ |
ZAR | 南アフリカ | 南アフリカランド |
MXN | メキシコ | メキシコペソ |
TRY | トルコ | トルコリラ |
BRL | ブラジル | ブラジルレアル |
このくらい覚えておくと、通貨ペアのバリエーションを知る上では十分でしょう。
通貨ペアとは
FXは、通貨と通貨の交換なので、1つの通貨でもう1つの通貨を買います。従って、2種類の通貨で表記されます。これを通貨ペアといいます。
米ドルと日本円の通貨ペアで例を見てみましょう。
左の通貨と右の通貨を『/』で仕切り、USD/JPYまたは、米ドル/円と表現します。表示の意味は、以下の通りです。
- 左側:取引通貨(取引する通貨)
- 右側:決済通貨(損益計算をする通貨)
為替レート
通貨ペアの価格表示は、取引通貨【1単位】に対する決済通貨の【交換比率】を意味します。この交換比率が「為替レート」です。
ドルストレートの意味
上記で、米ドル円と日本円の通貨ペアについて触れました。米ドル(USD)と直接交換する通貨ペアのことを、『ドルストレート』といいます。前述した主要通貨を対象に種類をあげると、以下の通りです。
表記 | 日本語 |
---|---|
USD/JPY | 米ドル/円 |
EUR/USD | ユーロ/米ドル |
GBP/USD | 英ポンド/米ドル |
AUD/USD | 豪ドル/米ドル |
NZD/USD | ニュージードル/米ドル |
USD/CAD | 米ドル/カナダドル |
USD/CHF | 米ドル/スイスフラン |
こうして確認すると、米ドル(USD)が『/』の左にある通貨ペアと右側にある通貨ペアがあります。この場合でも、左側の通貨(取引通貨)『1単位』に対して、右側の通貨(決済通貨)の交換比率という意味は変わりません。
日本円(JPY)が取引出来る通貨ペア
次に、日本円を使って取引出来る通貨ペアを確認しましょう。種類はたくさんありますが、メジャー通貨とFX業者の取り扱いが多い、いくつかのマイナー通貨をあげます。
表記 | 日本語 |
---|---|
EUR/JPY | ユーロ/円 |
GBP/JPY | 英ポンド/円 |
AUD/JPY | 豪ドル/円 |
NZD/JPY | ニュージードル/円 |
ZAR/JPY | 南アフリカランド/円 |
MXN/JPY | メキシコペソ/円 |
TRY/JPY | トルコリラ/円 |
BRL/JPY | ブラジルレアル/円 |
これ以外にも円と取引出来る外国通貨はありますが、これらの通貨ペアのことを『クロス円』あるいは『クロス円通貨』といいます。なお、米ドル/円(USD/JPY)は、ドルストレートになります。
米ドル(USD)を含まない通貨ペア
ここまでは、米ドル(USD)を含むドルストレート、日本円を含むクロス円の通貨ペアを取り上げました。外国為替市場では、あらゆる通貨同士の交換がなされていますので、米ドルも日本円も含まない通貨ペアは数多くあります。
ここでは、FX業者で取り扱っている組合せの通貨を取り上げます。
ユーロクロス
ユーロクロスとは、EUR(ユーロ)が取引通貨となる通貨ペアです(EUR/JPYは除く)。
表記 | 日本語 |
---|---|
EUR/GBP | ユーロ/英ポンド |
EUR/CHF | ユーロ/スイスフラン |
EUR/CAD | ユーロ/カナダドル |
EUR/AUD | ユーロ/豪ドル |
EUR/NZD | ユーロ/ニュージードル |
ポンドクロス
ポンドクロスとは、GBP(英ポンド)が取引通貨となる通貨ペアです(GBP/JPYは除く)。
表記 | 日本語 |
---|---|
GBP/CHF | 英ポンド/スイスフラン |
GBP/AUD | 英ポンド/豪ドル |
GBP/CAD | 英ポンド/カナダドル |
GBP/NZD | 英ポンド/ニュージードル |
その他の通貨ペア
上記以外のFX業者が取り扱っている、主な通貨ペアです。
表記 | 日本語 |
---|---|
AUD/CHF | 豪ドル/スイスフラン |
AUD/CAD | 豪ドル/カナダドル |
AUD/NZD | 豪ドル/ニュージードル |
CAD/CHF | カナダドル/スイスフラン |
NZD/CHF | ニュージードル/スイスフラン |
NZD/CAD | ニュージードル/カナダドル |
基軸通貨の役割
米ドル【USD】は世界の基軸通貨といわれていますが、それは貿易決済や金融取引量のシェアが圧倒的に多いことが、最も信頼性のある通貨としてその地位を築きました。
FXでも、米ドルが基軸となって為替レートが作られています。では、米ドルが為替レートにどのように関係しているか、確認しましょう。
下図は、為替レートのパネルです(ヒロセ通商LIONFXから引用)。
ドルストレートの場合、米ドルと直接交換できますが、それ以外の通貨ペアは、米ドルを挟みます。レートパネルでは、それを反映して表示しますので、投資家の皆さんは、いちいち計算しなくても表示されたレートで取引できますのでご安心下さい。
では、どのように米ドルを挟むのか、参考までにいくつか例を挙げて計算してみます。
クロス円の為替レートの仕組み
下図は、ユーロ/円(EUR/JPY)を買いで取引する場合の価格形成です。
日本円とユーロは直接交換できませんので、最初に円で米ドルを買って、その米ドルでユーロを買うという具合です。
為替レートは、取引通貨に対する決済通貨の交換比率で表されます。図に示した数値は、レートパネルから引用しています(以降同じ)。
なお、FX業者が提示する為替レートは、二通りあります。詳しくは、別記事「2wayプライスの意味と重要性」を参照下さい。
では、ユーロ円の価格計算をします。
ユーロ円の為替レート
1で得た米ドルでユーロと交換します(交換比率1:1.13954)。
これで、円でユーロを買ったことになり、ユーロ1通貨に対する円の交換比率は、以下になります。
EUR=1.13954 ×(107.257JPY)=127.223JPY
∴ EUR/JPY=127.223となります。
ドルストレート以外の為替レートの仕組み(1)
次に、米ドルを含まない通貨ペアの価格形成です。下図は、英ポンド/スイスフラン(GBP/CHF)です。
ユーロ円の為替レート
1で得た米ドルで英ポンドと交換します(交換比率1:1.25757)。
これで、英ポンドでスイスフランを買ったことになり、英ポンド1通貨に対するスイスフランの交換比率は、以下になります。
GBP=1.25757 ×(0.94064CHF)=1.18292CHF
∴ GBP/CHF=1.18292となります。
ドルストレート以外の為替レートの仕組み(2)
もう1ケース確認しましょう。通貨ペアはユーロ/英ポンド(EUR/GBP)を買う場合です。このケースでは、米ドルとの交換時に、「売り」が生じます。
ユーロ円の為替レート
※この場合の交換比率は、bidレートになります(レートパネルのEUR/GBP薄い青部分)。
1で得た米ドルでユーロと交換します(交換比率1:1.13954)。
これで、ユーロで英ポンドを買ったことになり、ユーロ1通貨に対する英ポンドの交換比率は、以下になります。
EUR = 1.13954(GBP/1.25749)= 0.90620GBP
∴ EUR/GBP=0.90620となります。
レートパネルの数値とは、若干の違いがありますが、誤差の範囲でしょう。
以上のように、米ドルは外国為替市場における為替レートの形成すべてに関与しています。これが基軸通貨といわれる理由です。
なお、実際にこのような取引をしているわけではなく、あくまでも為替レートを提示するプロセスの中で、このような計算が行われているということです。
この仕組みを知っておくと、例えば「EUR/GBPのスプレッド1.0pipsは、日本円でいくら?」や「GBP/AUDで50pips獲得したら日本円でいくら儲かるだろう」など、サクッと日本円で算出できます。
主要通貨ペアとは
最後に、主要通貨ペア(メジャー通貨ペア)を確認しましょう。定義はありませんが、世界で取引量の多い上位の通過同士の組合せは外せません。また、日本国内で取引量が多い通貨ペアも候補にあげましょう。
そうすると、概ね以下の通貨ペアが「主要な通貨ペア」といえるかもしれません。
表記 | 通貨イメージ |
---|---|
EUR/USD(ユーロ/米ドル) | |
USD/JPY(米ドル/円) | |
EUR/JPY(ユーロ/円) | |
GBP/JPY(英ポンド/円) | |
AUD/JPY(豪ドル/円) | |
GBP/USD(英ポンド/米ドル) | |
AUD/USD(豪ドル/米ドル) |
主要通貨ペアの特徴
主要通貨ペアは取引量が多いため、以下の傾向があります。
- スプレッドが狭い
- 大きな数量で取引しても、(他通貨ペアに比べれば)スリッページしづらい
より有利なスプレッドで大きな取引をしたい場合、メジャー通貨ペアを中心に取引していきましょう。