ビットコインを始めとする暗号資産(仮想通貨)は、法制度が目まぐるしく変化してきました。
世の中に広く浸透していた「仮想通貨」という名称そのものが、暗号資産に変更されてしまったほどです。
そこで、ビットコインなど暗号資産とFX(外国為替証拠金取引)を比較しましょう。
暗号資産にもFXがある
ここで少々ややこしいのが、暗号資産にもFXがあるという事実です。
- FX(外国為替証拠金取引)
- ビットコインFX、暗号資産FX
この記事では、単に「FX」と書く場合、外国為替証拠金取引を指します。この2つの差が分かりやすいように解説していきます。
では、本題です。以下の諸点について比較しましょう。
現物取引
ビットコインを始めとする暗号資産は、現物取引ができます。この点は、株式投資と同じです。
現物を持っていますから、自分が所有しているビットコインを、別の取引所やハードウェア・ウォレット等に移動できます。
(株式も、移管手続きを取ることにより、管理窓口となる証券会社を変更できます。)
下は、ハードウェア・ウォレットの写真です。
しかし、FXの場合、他のFX業者にポジションを移動できません。
例えば、米ドル/円の買いポジションを1万通貨持っているとしたら、最終的には下のいずれかとなります。
- 反対売買して決済
- 現受けして現金化(外貨を受け取る)
FXでポジションを他社に移動できない理由
他のFX業者に移動できない理由ですが、「本当はその外貨を持っていない」からです。
米ドル/円の買いポジションを1万通貨持っているとしても、実際に米ドルを1万通貨持っているわけではありません。
「計算上、米ドル/円を1万通貨買ったことにしている」だけです。
よって、口座残高を見ても、米ドルは全く増えていません(そもそも、米ドル残高の欄が存在しないFX業者も多いでしょう)。
ポジションの欄に、米ドル/円が書いてあるだけです。
手元に米ドルがないのですから、銀行口座等に移動できません。
「計算上の話だよ」という前提で取引しますから、円しか入金していないのに米ドル/円を売ったり、自己資金の何倍もの金額で取引できたりします。
移動したい場合は、「現受け」という手続きをとります。「計算上持っている」という状態から、「現物を持っている」状態にします。こうすることで、銀行の外貨預金口座に米ドルを出金可能になります。
FXの場合、外貨を現金で所有してもスワップポイントは付きませんし、為替レートも少々不利になります。
よって、あえて外貨の現金で売買するユーザーは、ほとんどいないと予想できます。
(外国旅行等で外貨が欲しい場合など、限られた場合に限り、外貨の現金で取引するでしょう。)
ハッキングや詐欺の問題
この現物取引ですが、暗号資産の発展を支えていると同時に、大きな問題を引き起こす原因にもなってきました。
具体的には、取引所等がハッキングされて、保管していた暗号資産をごっそりと盗まれてしまった!といった事件です。
日本だけでなく、世界中で何度も繰り返されてきました。
日本では、ハッキングに遭った取引所は、損害額を顧客に補償してきました。よって、顧客に実際の損失はなかったのですが、気持ちの良いものではありません。
(盗難に遭った際の暗号資産価格と、顧客に補償された際の価格は異なりますから、そこで差損益が出ることはあります。)
また、気軽に外部に送信できる性質を利用して、詐欺も横行してきました。
暗号資産の送受信に国境は関係ないため、詐欺する側から見れば、とても良い環境です。
しかし、法制度や技術が発達するにつれて、大きなハッキング被害はあまり聞かれなくなりました。
ただし、完全になくなったというわけではないので、気を抜かずに管理したいです。
取引所と販売所
次に、取引形式を比較しましょう。取引所・販売所という名称は、ビットコインなど暗号資産に特有ですが、FXに当てはめることも可能です。
販売所
販売所は、運営会社と顧客が売買する方式です(FXも、販売所形式)。取引画面を見ると、良く分かります。
下は、GMOコインの取引画面です。
GMOコイン(運営会社)が、売却価格と購入価格を提示し、顧客はそれを見て、買うか売るかを決めます。
特徴は、売却価格・購入価格ともに1種類しかないことです。そして、それぞれの価格は、時とともにどんどん変化していきます。
現物取引でもレバレッジを効かせた取引でも、同様の取引であり、販売所でのレバレッジを効かせた取引を「ビットコインFX」などと呼びます。
取引所
一方、取引所は、顧客同士が売買して、運営会社は取引場所を提供する役割になります。こちらも、取引画面に特徴があります。
上の画像は、取引所の注文状況です(板と呼ばれます)。様々な価格で、買い注文や売り注文が出されています。これは、顧客が出したものです。
顧客の考え方は、様々です。「現在値よりも高く売りたいな」「現在値よりも安く買いたいな」といった具合です。
できるだけすぐに売買したいと思う場合、現在値に近い価格で発注するでしょう。
時間はかかっても良いから希望の価格で売買したいという場合は、現在値と大きく異なる価格での発注になるかもしれません。
こういった希望が、板に表現されています。
FXの場合、取引所形式の売買はありません。そして、暗号資産では、取引所でレバレッジを効かせた取引もできます。「レバレッジ取引」と呼ばれます。
レバレッジの上限
- FX:25倍
- 暗号資産:2倍
暗号資産につき、2020年時点の最大レバレッジは4倍ですが、2021年4月までに2倍に引き下げられます。
正直なところ、レバレッジ2倍では、やる気をなくしてしまうユーザーもいるのでは?と思います。
では、レバレッジ上限が25倍のFXの方が有利なのか?ですが、即断できません。と言いますのは、通貨ペアとビットコインなどでは、価格変動の大きさが異なるからです。
値動きの例
例えば、米ドル/円が、110円から90円になったとしましょう。しかも、1か月間で。この場合、世の中は大騒ぎになること、間違いありません。
日本経済に与えるダメージはどうなのか。今後の為替レートはどうなるのか。ニュースを始め、インターネット上で大変騒がしくなるでしょう。
では、ビットコインの価格が、110万円から90万円になったとしましょう。どうなるでしょうか。
暗号資産の情報サイトでは、価格が下がったという情報が流れるでしょう。
しかし、SNS上で騒がれることはないでしょう。「ああ、またか。」くらいの反応です。
と言いますのは、同じ事が何度も繰り返されていますので、珍しくないためです。
最大レバレッジが小さいですが、ビットコインの値動きが大きいので、大きな差益を狙えます。
米ドル/円の場合、1日で100銭(1円)動いたら「今日は大きく動いたなあ」という感じです。
これほど値動きが小さい場合、証拠金を55万円にすると、1取引で20万円の利食いを狙うには高いレバレッジが必要です。
レバレッジ2倍で十分
見た目はレバレッジ上限が低すぎる暗号資産ですが、実際の値動きを見ますと、2倍でも十分取引できると分かります。
結果としては、レバレッジ上限が高いから良い、低いからダメだということはなく、FXとビットコイン等の特徴を踏まえた数字になっていると分かります。
取引可能な通貨ペア
次に、取引可能な通貨ペアを比較しましょう。一般的なFX業者の場合、20種類~30種類くらいの通貨ペアがあります。
そして、FX業者によっては、珍しい通貨ペアも売買できます。それを考慮しますと、通貨ペアの選択肢は40以上、というイメージでしょうか。
中には、100を超える通貨ペアで売買できるFX業者もあります。
一方、暗号資産の場合は、10種類未満が多いでしょう。徐々に増えている感がありますが、その増加速度はゆっくりな感じがします。
では、世の中に流通している暗号資産の種類はそんなに少ないのか?ですが、種類自体は大変たくさんあります。
下は、暗号資産の総合サイト「CoinMarketCap」からの引用で、時価総額のランキングです。
この記事を執筆した時点で、全部で2,677種類ありました(画像左下の赤枠)。
このウェブサイトに登録されていない暗号資産もあるでしょうから、総数はもっと多いと予想できます。
しかし、右側の赤枠を見ますと、時価総額が「?」になっています。
あまりに取引高が少なかったり、売買できる取引所がなかったり、様々な理由で時価総額を算出できない例が続出しています。
国内取引所から見れば、種類が多くても、不人気だったりプログラムの完成度が低かったりする暗号資産は、上場できません。
世の中の趨勢を見ながら、ゆっくりと取扱数を増やしていくのでは?と予想できます。
取引の選択肢という意味では、FXに軍配が上がると言えそうです。
業者が経営破綻する場合
比較の最後に、業者が経営破綻する場合を考えましょう。
現実になって欲しくないですが、企業は倒産することがあります。そうなるとき、私たちが預けている資産はどうなるでしょうか。
FX業者が破綻すると
FXの場合、預けている全額が返金されます(トレードで損した額は戻ってきません)。仮に、1兆円預けていたとしても、戻ってきます。
そのように法律で決まっているからです。
具体的には、FX業者は、顧客から預かった証拠金を信託銀行に預けます。FX業者が経営破綻する場合、信託銀行に預けられた資金は顧客に返金されます。
信託銀行が経営破綻しても、同様に返金されます。極めて安全度が高いです。
暗号資産の場合
では、暗号資産の取引所・販売所の場合はどうでしょうか。2つについて確認が必要です。
現金
顧客が預けた現金については、FXと同じです。すなわち、信託銀行で管理しますので、100%顧客に返金されます。
暗号資産
暗号資産の場合は、扱いが異なります。信託銀行で管理してもらえないからです。業者内で、顧客資産と会社資産を分別して管理しています。
ハッキングに遭わないように、コールドウォレットで保管するのが基本となっています。
では、業者が経営破綻する場合、どうなるでしょうか。単なる分別管理だと、様々な債権者への支払に充てられてしまうかもしれません。
その点は、資金決済法で規定しています。「顧客は、自分が預けた資産につき、他の債権者に優先して弁済を受ける権利がある」という趣旨です。
実際の運用については、その時になってみなければ分かりません。しかし、顧客資産の安全度は高い、と評価できます。
比較のまとめ
以上、FXとビットコイン等について、様々な観点から比較しました。
トレードという点で見ますと、どちらが良くてどちらが悪いという評価にはならず、それぞれにメリットがあります。
よって、自分が好きな方で取引するということになるでしょう。
暗号資産を取引するなら
最後に、ビットコインなど暗号資産の取引で有利な取引所・販売所をいくつかご案内しましょう。
DMM Bitcoin
DMM Bitcoinは、15種類以上の通貨ペアで取引可能です。これだけの種類を揃えている業者は稀です。また、DMMが運営していますので、安全度も高いです。
さらに、上のバナーの通り、口座開設完了で1,000円もらえます。しっかりいただきましょう。
コインチェック
コインチェックは、スマホアプリの使いやすさに定評があります。スマホで分かりやすく、簡単に取引できるメリットがあります。
また、暗号資産は、持っているだけでは増えません。これが預金と異なる点です。
しかし、コインチェックに預けることにより、最大で年5%の手数料を受け取ることができます。これも魅力です。
GMOコイン
GMOコインは、取引所と販売所の両方の機能を持っています。両方とも、複数の通貨ペアで取引できます。
取引所・販売所のいずれか一方が充実しているという業者は、数多くあります。しかし、両方とも充実しているのは、GMOコインです。
また、GMOという大手ですから、流動性や安全度も高いです。安心して売買できます。