異なる2種類の通貨を交換する際の、交換比率のことを為替レートといいます。この為替レートは固定ではなく、いろいろな場面で異なった数値で示されます。
たとえば、海外旅行に出かける前にトラベラーズチェックを発行してもらうときのレートと、現金に交換してもらう場合のレートには違いがあります。
また、銀行が顧客と取引する「対顧客市場」と、銀行間同士で取引が行われる「インターバンク市場」でも、為替レートは異なります。
では、為替レートが動く要因を確認していきましょう。
需要と供給の関係で動く
為替相場は、基本的には2国間の力関係によって、強い方の国の通貨が買われて高くなり、弱い国の通貨が売られて安くなります。
例えば、米ドルと日本円という2つの異なった通貨を比べた場合、米ドルが欲しいという人がたくさんいて、日本円の人気が低ければ、米ドルの価値が高くなります。
こうしたカラクリは、株式市場や債券市場と同じです。売られるものと買われるものの力関係、つまり、需要と供給のバランスによって値段が高くなったり安くなったりします。
需給関係に影響を与える要因
需要と供給の関係に大きな影響を与えるのは、景気や金利、国際収支といった、経済の基礎的な要因です。
経済の基礎といってもさまざまな要素があり、この要素を「ファンダメンタルズ」と呼んでいます。
つまり、ファンダメンタルズによって、為替相場(為替レート)の動向が変わっていくということです。
景気動向
景気が良い国の通貨は、株価や金利上昇への期待感から買われ上昇します。逆に、景気が悪い国からは資本や資産が逃避するため、売られやすくなります。
そのため、景気動向に関連する経済指標の発表は、為替相場を動かす材料となります。
特に、アメリカの雇用統計やGDP(国内総生産)などの重要指標は注目度が高く、相場に大きな影響を与えます。
金利・物価
お金は、低金利通貨の国から高金利通貨の国へと流れる傾向にあります。大きな金利収入を得られるためです。少なくとも短期的には、金利が高い国の通貨は買われて上昇しやすくなります。
金利は、国内の景気や物価と密接に関係しています。例えば、物価上昇が強くなりインフレの傾向が出てくると、中央銀行は政策金利を引き上げて景気を調整します。
また、米国の金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)の声明と議事録は、特に注目を集めます。
金利は高ければ良いというわけでもない
ただし、金利は高ければ良いというわけでもありません。例えば、政治や経済が不安定だから金利が高いという場合です。
銀行が個人や法人にお金を貸す場合、信頼できる相手だったら貸付金利を低くできます。元本を確実に返済してくれると期待できるからです。
しかし、少々不安がある貸付先だったら、返済できないリスクを考えて貸付金利を高くするでしょう。
同じ事が、国レベルの金利でも起こります。
高金利の通貨を買ってスワップポイントを得ようという場合、「景気が良いから金利が高い」のか、「国が不安定で信用されていないから金利が高い」のか、確認しましょう。
国が不安定だから金利が高いという場合、長期の為替チャートに特徴が出ます。その国の通貨は弱くなる一方になります(すなわち、円高です)。
下は、トルコリラ/円の長期チャートです(FXプライムbyGMOから引用)。ひたすら円高になっている様子が分かります。
トルコリラ/円は高金利通貨ペアの代表格ですが、この円高状況を見ますと、「好景気だから高金利」なのではなく「信頼度が劣るから高金利」だと分かります。
次の要因に進みましょう。
国際収支
貿易収支やサービス収支からなる経常収支や、資本収支によって発生する実需は、為替変動の大きな要因となります。
例えば、日本の経常収支が黒字だと、受け取った外貨を自国通貨に換える必要が出てくるので、円高傾向になります。
同様に、資本収支において、資金流入のほうが多い「流入超」の状態だと、自国通貨が買われます。
為替介入
金融当局は、為替レートの急激な変動を抑制するため、または過度な通貨高、通貨安を是正するために、為替介入を行うことがあります。
日本では、財務相の指示で日銀が市場介入します。その額は数兆円規模にのぼるため、為替相場を動かす大きな要因となります。
また、数カ国が連携して行う協調介入は、為替相場の流れを大きく変えることもあります。
ファンダメンタルズはこの他にもあり、為替レートを動かす原因となります。
日銀の市場介入額
日銀は久しく市場介入をしていませんが、2010年~2011年あたりで巨大な介入をしています。米ドル/円が史上最高値(70円台後半)を付けたころです。
下は、月ごとの介入額をまとめたものです。
2010年後半から市場介入が始まり、最も多い月には、1か月で10兆円に到達しようかという勢いだったことが分かります。
この介入によって、米ドル/円の円高は止まりました。そして、2012年以降に大きく円安に転換しています。
テクニカル的要因
為替市場に参加している投資家は、ほとんどのケースにおいてチャートを見ながらトレードしています。
多くの投資家が同じようなチャートを利用して売買することから、チャート上で市場参加者の思惑を推測しながら、取引が行われることもあります。
為替市場では、サポートライン(支持線)やレジスタンスライン(抵抗線)が、多くの市場参加者に注目されています。
そのため、ラインを突破すると短期的に相場を加速させることがあります。
また、ラウンドナンバーと呼ばれる、100.00円や80.00円などの切りの良い数字の近辺には、大量の注文が交錯します。よって、為替が大きく動く場合があります。
投機的要因
膨大な資金を投入し、短期的に利ざやを稼ぐ取引を繰り返すのが、ヘッジファンドや機関投資家などの「投機筋」です。
投資額が大きく、外国為替市場における取引割合が大きいことから、短期的な為替相場は投機筋の影響が大きいといわれることがあります。
地政学リスク
戦争やテロによって政情不安が起きると、投資活動や消費に悪影響が出ることを懸念され、その国の通貨は売られる傾向にあります。
以前は「有事のドル買い」と呼ばれるように、基軸通貨であるドルが買われることが多くみられました。
しかし、最近では、永世中立国スイスのスイスフランが資産の逃避先として買われるケースもあります。
為替レートの急激な変動は、そのままリスクにもつながりますので、リスク要因についても知っておきましょう。
為替レートの上昇・下落で利益を得る
以上、為替レートの変動理由を確認しました。これらの要因は、為替レートの上昇要因でもあり、下落要因でもあります。
よって、これらの要因で為替レートが上昇すれば、買いで勝負です。逆に、為替レートが下落すれば、売りで勝負です。
FXは、相場が上昇局面でも下落局面でも取引ができる(利益を狙える)という特徴があります。