FXとは、通貨と通貨の交換です。
通貨同士を交換するには、一定の基準が必要です。例えば、「1米ドルと110円を交換しましょう」という具合です。この数字(ここでは110円)のことを為替レートと言います。
そして、多くの場合、為替レートは変動します(変動相場制)。昨日は米ドル円の為替レートが110円だったのに、今日は109円になっているという具合です。
この為替レート変動で利益を狙う取引がFX(外国為替証拠金取引)です。
そこで、FXの取引で利益がでる仕組みについて、図を使いながら確認していきましょう。
FXの取引でできること
FXでは、下の取引ができます
- 米ドル円を買って、取引を始める
- 米ドル円を売って、取引を始める
- 円を含まない通貨ペア(ユーロ/米ドルなど)を売買できる
- レバレッジ取引ができる
私たちは、FX業者に証拠金を入金して取引を開始します。多くの場合、円を入金するでしょう。
すると、米ドル/円を買うというのは、分かります。米ドル/円を買うとは、円を売って米ドルを買うということだからです。
では、米ドル/円を売って取引を開始するとは、どういうことでしょうか。
米ドル/円を売るとはすなわち、米ドルを売って円を買うということです。しかし、証拠金は円です。米ドルではありません。手元に米ドルはありません。
しかし、米ドルを売るところから取引を始められます。
円を含まない通貨ペアの売買は、さらに分かりません。円しか入金していないのに、円を含まない通貨ペアを売買できます。
さらには、レバレッジ取引と言って、入金額(証拠金)よりも大きな金額で取引することもできます。
FXの仕組みは、いったいどうなっているでしょうか。
差金決済とは
この不思議なFXのルールを理解するためのキーワードは、「差金決済(さきんけっさい)」です。
差金決済とは、トレードの最終損益だけ口座残高に反映するという仕組みです。途中経過は残高に反映しません。
米ドル/円を買う場合を例にして、FXの仕組みを確認しましょう。
米ドル/円を買う取引
米ドル/円を買います
最初に、米ドル/円を買います。1ドル=100円で1万通貨買うとしましょう。すなわち、取引金額は100万円です。100万円支払って、1万ドルをもらうという取引です。
計算上、1万ドル保有したことにするだけです。
米ドルを売ります(決済します)
次に、1ドルが110円になったので、利食い決済します。すなわち、米ドルを売って、円をもらいます。
取引結果を口座に反映します
上の取引を、まとめます。
- 買い取引:米ドル/円=100円で、1万通貨買い(100万円の支払い)
- 決済取引:米ドル/円=110円で、1万通貨売り(110万円の受取り)
- 差引合計:米ドル=ゼロ(保有なし) 円=+10万円
取引終了時の結果が、口座残高に反映されます。すなわち、円が10万円増えます。この仕組みを理解すると、米ドル/円の売りから始まる取引も理解しやすくなります。
米ドル/円を売る取引
次に、米ドル/円を売る取引の仕組みを確認しましょう。
米ドル/円を売ります(米ドル/円=100円)
- 米ドル:1万ドルの売り
- 円:100万円をもらう
米ドルを買います(米ドル円=90円で決済)
次に、先ほど売った米ドルを買い戻します。こちらも、計算上の話です。
- 米ドル:1万ドルの買い
- 円:90万円を支払う
取引結果を口座に反映
上の2つの取引を、まとめます。
- 売り取引:米ドル/円=100円で、1万通貨売り(100万円の受取り)
- 決済取引:米ドル/円=90円で、1万通貨買い(90万円の支払い)
- 差引合計:米ドル=ゼロ(保有なし) 円=+10万円
新規売りと決済取引の結果、+10万円になりました。すなわち、口座残高が10万円増えました。
こうして、手元に米ドルを持っていなくても、売りから取引を始められます。便利な仕組みです。
円を含まない通貨ペア
ユーロ/米ドルなど、円を含まない通貨ペアの場合も同じ仕組みです。なお、円を含まない通貨ペアの場合、最終損益は円でなく外貨です。
そこで、最終損益で得た外貨を、円と交換します(この交換は、FX業者が自動的に行います)。
レバレッジ取引ができる
差金決済の仕組みを利用して、自己資金よりも大きな金額の売買ができます。すなわち、レバレッジ取引ができます。
手持ち資金(証拠金)を50万円として、米ドル円を買う取引を考えてみます。
米ドル/円を買います
最初に、米ドル/円を買います。1ドル100円で1万通貨買うとしましょう。すなわち、取引金額は100万円です。
証拠金50万円で100万円分の取引をしていますから、レバレッジは2倍です。
米ドルを売ります(決済します)
次に、1ドルが110円になったので、利食い決済します。すなわち、米ドルを売って、円をもらいます。こちらも、実際に1万ドルを渡すわけではありません。
取引結果を口座に反映
上の2つの取引を、まとめます。
- 買い取引:米ドル/円=100円で、1万通貨買い(100万円の支払い)
- 決済取引:米ドル/円=110円で、1万通貨売り(110万円の受取り)
- 差引合計:米ドル=ゼロ(保有なし) 円=+10万円
取引終了時の結果が、口座残高に反映されます。すなわち、円が10万円増えます。差金決済の仕組みを利用して、レバレッジ取引ができました。
レバレッジの効果
なお、証拠金50万円で10万円の利益ですので、利益率は20%です。
レバレッジを使わずに取引する場合、証拠金として100万円を準備する必要があります。すなわち、100万円の資金で、10万円の利益です。利益率は10%です。
レバレッジを使うと、同じ利益の額でも、収益率を高くできることが分かります。
2通貨間の金利差も利益に
FXの取引では、2通貨間の金利差が利益になることがあります。金利の低い通貨で金利の高い通貨を買うと、金利差分が受け取り金利になります。
たとえば、円を売ってトルコリラを買うという取引で、日本の金利が-0.10%、トルコの金利が8.25%だとします。
金利差
8.25-(-0.10)=8.35%
この金利差分を受け取れます。これをスワップポイントといい、FX取引参加中は毎日受け取ります。
スワップポイント獲得を狙うトレーダーは「スワップ派」と呼ばれ、長期投資で参戦しています。
この取引が成立する理由ですが、FXは通貨だけでなく、金利も交換しているからです。営業日が終わるたびに、1日分の金利相当額の受払をします。
金利が高い通貨を売って、金利が低い通貨を買う場合は、スワップポイントはマイナス(支払い)になりますので注意が必要です。