トレード画面の為替レートを見て、この価格で売買したいと思って注文を出したら、実際に約定したレートが注文レートと違うことがあります。
このように、希望レートと約定レートに違いが生じることを『スリッページ』といいます。また、スリッページが生じた場合に『すべる』と呼ぶこともあります。
スリッページが生じた場合、投資家にとって有利に『すべる』こともあれば、不利に『すべる』こともあります。
そこで、発生する仕組みや対策方法、『すべらないFX業者』などを確認していきましょう。
スリッページが起きるしくみ
刻々と変動する為替相場では、FX業者が投資家に提示するレートも絶えず変動しています。
原因
スリッページが生じてしまう一番の原因は、投資家が発注した注文がFX業者のシステムで処理される前に、為替レートが変動してしまうためです。
下の絵を見ながら、もう少し詳細に考察しましょう。
FX業者は、カバー先(銀行など)から受けた為替レートを基にして、投資家に提示します。
為替レートは、どんどん変化していきます。
このため、FX業者が為替レートを配信し、投資家のディスプレイやスマホ画面に表示されたときには既に、FX業者内では別の為替レートを提示し始める場合があります。
為替レートの動きが激しければ、投資家とFX業者で認識しているレートの差が大きくなります。
インターネットの通信速度は、極めて速いです。よって、FX業者が配信した為替レートが投資家に届くまでに要する時間は極めて小さいです。
しかし、この時間差をゼロにすることは困難です。
そして、実際にトレードしてみて、思った数字と違うレートで約定すると、「すべった」と認識することになります。
よって、「すべる」ことは何も特別な事ではなく、ある意味自然と考える事もできます。
したがって、スリッページはFX業者の作為がなければ、投資家にとって有利にも不利にも『すべる』可能性があるということになります。
スリッページが発生しやすい例
なお、スリッページが発生しやすい場合がありますので、それを確認しましょう。
FXの為替レート表示は、2wayプライスです。下の絵のように、2種類の為替レートが同時に表示される方式です。
投資家が売るときの為替レートはbid(ビッド)、買う時はask(アスク)です。
今、買いポジションがあって、安全のために損切りの逆指値注文を出しているとしましょう。
具体的には、損切りレート(bid)が指定レートになったら売って損失を確定させますが、業者によって、以下の通り約定します。
- bidの為替レートが指定レートになったら、その時の実勢レートで約定
- bidの為替レートが指定レートを越えたら、その時の実勢レートで約定
いずれにしても、「指定レートで確実に約定させる」という性質ではありません。
「損切りの為替レートに到達した!では、損切り注文を約定させよう!」とコンピュータが判断する一瞬の間に、為替レートが変わる場合があります。
そこで、特定の為替レートよりも不利な損切りは絶対嫌だというときには、本来の損切り位置よりも少し保有ポジションの取引レートに近いところで発注してください。
スリッページを発生させたくない場合
上の損切りの解説は、少々ややこしいです。
そこで、絶対にスリッページは嫌だという場合には、ストリーミング注文で発注します(詳しくは、別記事「ストリーミング注文」でご確認ください)。
ストリーミング注文の場合、「許容スリッページ」を指定可能です。
これは、不利なスリッページになる場合、どこまでなら許容して約定させるか?という設定です。
例えば、「1銭までなら、不利な約定でも構わない」と指定すれば、1銭を超えて不利なスリッページになる約定は発生しません。
ただし、「何の指定もなければ、1銭を超えるスリッページで約定するはずだった」という場合、この注文は約定拒否になります。すなわち、売買不成立です。
例
許容スリッページ:1銭
本来のスリッページ:1.5銭
許容スリッページを超える大きさなので、売買不成立
スキャルピングで5銭未満の利食いを狙うような、細かいトレードでない限り、少々のスリッページは許容して約定させた方が良いのでは?と予想できます。
これは投資家の好みの部分もありますので、お好みの設定を採用します。
(ちなみに、投資家にとって有利なスリッページは、どれだけ大きくても約定します。)
スリッページ調査
では、スリッページはどれくらいの頻度で発生するでしょうか。直感でなく、正確なデータがありますので見てみましょう。ヒロセ通商が公開しています。
米ドル/円をストリーミング注文で売買した調査結果です。
発注回数 | 1,400回 |
約定回数 | 1,400回(約定率100%) |
顧客有利スリッページ | 12回 |
顧客不利スリッページ | 10回 |
スリッページ発生率 | 1.6% |
実質スプレッド | 0.199銭 |
調査結果の分析
上の数字を分析しましょう。
発注回数は1,400回で、約定回数も1,400回です。すなわち、発注すれば必ず約定したという実績です。当然のように思えるかもしれませんが、これは極めて重要です。
発注したのに約定しない場合とは、損切りしたいのにできず、利食いしたいのにできないということです。
これに遭遇したら大変焦るでしょうし、その後に腹が立つこと必至。
うまく約定しなかった結果、利食い幅が大きくなったとしたら、その場はOKでしょう。しかし、別の機会で約定できなかったら、全く面白くありません。
この点、ヒロセ通商の約定力の強さは安心材料です。
顧客有利なスリッページ
そして、肝心のスリッページですが、22回発生しています。率にして1.6%です。
この率は高いと判断すべきか、それとも低いとみなすべきか、これは読者の皆様の感覚によるでしょう。他社との比較が困難ですので、評価がむずかしいです。
ここで重要なのは、顧客有利にすべったのか、それとも不利だったか?です。
顧客有利なスリッページとは、例えば、米ドル/円=110.000円で買い注文を出したら109.999円で約定したという場合です。わずか0.1銭ですが、顧客有利に約定しました。
顧客有利が12回、顧客不利が10回ですから、顧客有利なスリッページが多かったということです。
そして、ヒロセ通商の米ドル/円スプレッドは、0.2銭(原則固定、例外あり)です。スリッページが起きた結果、実質的なスプレッドは0.199銭となりました。
「スリッページ=悪」のようなイメージで語られがちですが、顧客有利でしたら、いくらすべっても歓迎です。スリッページが嫌だという場合は、ヒロセ通商で取引するのが選択肢になるでしょう。