投資家にとっての悩みといえば、毎年やってくる確定申告。利益が増えてくるにつれ、この税金対策に頭を悩ませる方もいるかと思います。
そこで、FXの税制についての【3つのポイント】について確認しましょう。
FXの税制【3つのポイント】
- 税率は、一律20.315%の『申告分離課税』
- 他の商品先物取引などとの『損益通算』が可能
- 3年間に渡り、『損失の繰り越し控除』が可能
税率と課税方式
FXで得た利益に対する税率は、利益額・給与所得額に関係なく一律20.315%の申告分離課税となります。なお、給与所得については、総合課税です。
税率の内訳
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%
損益通算
損益通算というのは、1月1日~12月31日の間に取引したFX、日経225オプション、商品先物取引などの損益を合計して課税計算することです。
簡単にいうと、FXで100万円の利益が出て、先物で40万円の損失があった場合、課税対象となる額は、100万円 - 40万円 = 60万円 ということになります。
なお、ここで注意が必要なのは、暗号資産(仮想通貨)です。暗号資産の損益は、FXの損益と通算できません。
すると、以下のような大変な事態が起きるかもしれません。
(例)
FX:1,000万円の損失
暗号資産:1,000万円の利益
この場合、損益合計は0円ですが、税務上は違います。暗号資産の1,000万円について、税金を支払います。
暗号資産の税金は、給料等と合算して累進課税ですので、税額は数百万円以上になるかもしれません。
FXで1,000万円損して、1円も儲かっていないのに多額の税金も支払うことに。こんな状態にならないよう、細心の注意を払いましょう。
損失の繰り越し控除
損失が出た場合、翌年以降3年間に渡って、その損益を次年度以降の損益計算に組み込むことができます。これを『損失の繰り越し控除』といいます。
下図の例でいうと、最初の損益通算が100万円なので、翌年以降3年間繰り越しました。結果は4年間トータルの損益はマイナス25万円となり、その間の税金は0円です。
繰越控除は3年間ですから、その翌年から『損益通算』はリセットされます。
決済していないポジションの扱いについて
年末を越えて保有するポジションには、含み損益やスワップポイントが存在しますので、税金にも注意が必要です。
確定申告をする場合、各FX業者が用意している取引報告書を利用します。
複数の業者を利用している場合は、それぞれの報告書を使って損益通算し、課税対象額をはじき出します。
ここでの注意点は、12月31日の時点でまだ決済していない(未決済)ポジションを、どう取り扱っているかということです。
つまり、未決済ポジションの課税は、FX業者次第になります。課税パターンは、下の2つに分かれます。
未決済ポジションの取扱いパターン
- 含み損益は課税対象外、スワップポイントは課税対象【TYPE-A】
- 含み損益・スワップポイントどちらも課税対象外【TYPE-B】
FX業者の取引利益に対する課税・非課税パターン(例)
企業名 | 課税・非課税の条件 | TYPE |
---|---|---|
セントラル短資FX | 決済によって1年間に確定した売買益が課税対象。年末における含み益は非課税。但し、スワップポイントについては口座残高に反映済みのため、ポジションが未決済でも課税対象となる。 | A |
DMMFX | 決済によって1年間に確定した売買益が課税対象。年を越した未決済ポジションの含み益に対しては、スワップポイントを含め課税対象外。 | B |
セントラル短資FXのように、未決済ポジションで発生したスワップポイントを営業日毎に口座残高に反映しているケースは、確定申告の対象(課税対象)となります。
未決済ポジションのスワップポイント受け取り
DMMFX等で取引している場合、未決済ポジションのスワップポイントは口座残高に反映されていません。
すなわち、スワップポイントを口座から引き出せません(評価損益等には反映されます)。
これだと、少々不便に感じる場合があるかもしれませんが、スワップポイントだけを口座から引き出す方法があります。
「スワップポイント受取」「スワップポイント振替」と呼ばれる機能です。これを使うと、未決済ポジションのスワップポイントを口座残高に反映した状態にできます。
この機能を使う場面は、いくつかありそうです。
例1
決済予定がないポジションを年単位で保有していて、スワップポイントが蓄積したので口座から引き出したい場合。
例2
年間の決済損益はマイナスだが、スワップポイント引出しを使えば年間損益をゼロ近辺にできる場合。年間損益はマイナスよりも少しのプラスくらいの方がうれしいです(年間利益が20万円以下の場合、確定申告不要です)。
お好みの使い方ができます。
必要経費の控除も忘れずに
なお、税金を支払う際、FX取引のために使った必要経費を、利益から差し引くことができます。例えば、以下の例は必要経費と認められると考えられます。
- FXの関連書籍購入
- FXセミナー参加費
- FXセミナー参加のための交通費 など
なお、自分に納税義務があるかどうか、あるとすれば課税対象となるのはいくらかなど、詳しい内容につきましては、専門家である税理士に確認してください。
【Q&A】FXの確定申告の必要性について
質問
FX業者の取引画面から年間損益報告書を確認したところ、今年の利益は130万円でした。
① 確定申告の対象となるでしょうか?なお、昨年までの3年間で100万円以上の損を出しており、合算すると損益は20万円以下です。また、過去に確定申告をしていません。
② 株式投資や投信の利益とは別扱いになるのでしょうか?
回答
FXで得た利益の税金について、FX業者のページを見ると、下の説明があります。
FX取引で得た損益は雑所得に分類され、申告分離課税の対象となります。
普段は確定申告の必要がないサラリーマンの方も、確定申告が必要な場合があります。
FXで得た利益(及び他の雑所得の合計)が年間20万円を超えると確定申告が必要であり、20.315%の税率で納税義務があります。
1年分の確定した損益を確認
問①の場合、1年間で確定した損益を確認します。
130万円超ですので、年間20万円の利益を超えています。よって、確定申告を行う必要があります。
なお、取引で損失が出た場合、その翌年以降3年間に発生した利益から損失額を控除することが可能です。
しかし、この繰り越しを行うには、損失が発生した年も確定申告を行う必要があります。繰り越しを次の年、更に次の年と継続する場合も、毎年確定申告が必要です。
問いに関するまとめ
- 今年出た利益は130万円
- 過去3年間の損益を合算すると損益は20万円以下
- 過去に確定申告をしていない
確定申告をして損失の繰越をしていれば、損益合計が20万円以下になるので納税義務はありません。
しかし、確定申告は行っていませんので、この場合は損益合計が130万円超となり、納税の義務が生じます。
なお、質問の2つ目ですが、FXと投資信託等は損益を合算できません。
確定申告はしっかりと行いましょう
確定申告といえば、大変なイメージがあるかもしれません。しかし、きちんと対処することで皆さんの大切な資金をムダにすることはなくなります。
インターネット上でも公的機関のページがたくさん整備されてきておりますので、ぜひ一度確認することをおすすめします。
※税金と確定申告についての情報は万全を期しておりますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
今後、税制改正等が行われた場合、内容が変更となる可能性があります。詳細については、税理士または最寄りの税務署にご確認ください。