損失を確定するパターンには、2種類あります。
- ロスカット(損切り)
- 強制ロスカット
ロスカット(損切り)は、自分の意思で損失確定することです。どれだけFXが上手な人でも、短期トレードになればなるほど、ロスカットを避けて通れないでしょう。
一方、強制ロスカットとは、顧客の意思にかかわらず、FX業者が強制的に顧客の損失を確定することです。あらかじめ公開ている基準に基づき、FX業者は淡々と実行します。
では、なぜこのような措置を執るのか、どのような基準で実行されるのか、強制ロスカットされるとどうなるのかなどを確認しましょう。
最後に、各FX業者の基準もご案内します。
強制ロスカットが必要な理由
顧客にとって嫌な強制ロスカットですが、なぜこのような制度があるのでしょうか。それは、FXの仕組みを考えると分かりやすいです。
FXとは、証拠金を元手にして、証拠金よりも大きな取引が可能です。イメージ図は下の通りです。
左側は証拠金額、右は取引額です。レバレッジを使った取引ができますので、取引額を証拠金額よりも大きくできます(取引額の棒グラフが長くなっています)。
この状態で、自分が持っているポジションが含み損になったとしましょう。右側のグラフで、含み損の分だけ評価額が下がります。この下がった金額は、証拠金にも反映されます。
その分だけ、証拠金が減りました。
さらに、含み損が大幅に増えたとしましょう(下図)。右側のグラフで、含み損がさらに大きくなっている様子が分かります。
含み損が借金になる場合
この含み損を、証拠金にも反映します。すると、証拠金額よりも大きな含み損になってしまいました。
仮に、この時点で損失を確定すると、顧客は借金になってしまいます。
顧客としては、「含み損が解消するまで待って!」と言いたくなります。しかし、FX業者から見れば、それを受け入れることはできません。もっと含み損が大きくなるかもしれないからです。
仮に、この状態で決済するとしましょう。すると、以下の構図になります。
- 顧客:FX業者に対して、借金を背負う
- FX業者:顧客の借金を立て替えてインターバンク市場に支払い、顧客から資金を回収する
顧客は、FX業者に入金した全額を失い、さらに借金を背負います。借金を返済しなければなりませんが、返済できるかどうか。それは顧客の銀行口座の状況次第です。
一方、FX業者から見ると、ポジションを決済するために、一時的に顧客の借金を立て替えます。そして、顧客から借金を回収します。
少額の借金ならば、立て替えてもFX業者の経営に影響はないでしょう。しかし、立て替え額が大規模になると、負担できずに倒産してしまうかもしれません。
海外では、実際に経営破たんに追い込まれたFX業者も存在します。
FX業者から見ても、顧客から見ても、何と不幸な状態でしょうか。この不幸な状態を回避しなければなりません。
そこで、強制ロスカットの制度があります。顧客が借金になる前に、強制的にロスカットします。すると、以下の通りになります。
強制ロスカットが実行されると
- 顧客:大損だが、口座に多少の資金が残る
- FX業者:借金を立て替える必要はないし、回収する必要もない
顧客が借金を背負う場合に比べて、大幅にマシになりました。
顧客は損しているので、ハッピーではありません。しかし、借金はありませんし、わずかかもしれませんが口座にお金が残ります。
ただし、強制ロスカットが発動されるよりも早く含み損が巨大化する場合、結果的に借金となってしまう場合があります。
強制ロスカットになる基準
では、どの状態になったら強制ロスカットになるでしょうか。FX業者ごとに少しずつ異なりますので、例で確認しましょう。
原則:証拠金は取引額の4%以上を確保
この基準は、いわゆるレバレッジ25倍の基準です。レバレッジ25倍ということは、取引額に対して必要な証拠金額は4%です。
例
米ドル/円=100.00円で1万通貨買うと、取引額は100万円です。この時の必要証拠金は、100万円の4%すなわち4万円です。
ただし、含み損が発生すると、証拠金額が減っていきます。一方、取引額は変わりません。上の例でいえば、100万円のままです。
よって、4%ギリギリの証拠金で取引を開始すると、取引開始直後に4%の基準(レバレッジ25倍)の基準を満たさなくなる可能性があります。
基準を満たさない場合どうなるか?ですが、FX業者によって対応が変わってきます。
FX業者の対応
- 即座に強制ロスカット
- 証拠金が足りない状況を認めるが、特定の時刻までに入金を要求(追証)
即座に強制ロスカットというのは、分かりやすいです。要するに、常にレバレッジを25倍よりも小さくしなさいということです。
よって、レバレッジが25倍以上にならないように、注意深く取引します。
特に、デイトレードやスキャルピングは、レバレッジを高めにして取引することがあります。レバレッジの監視が大切です。
一方、証拠金が一時的に不足しても良いという場合、レバレッジは25倍を超えることもあります。
即座に強制ロスカットとはなりませんが、しばらくすると強制ロスカットになってしまいます。
そこで、追加入金するか、ロスカットして損失を確定するかを決めます(相場が好転してくれるのが、最も嬉しいですが)。
なお、一時的に含み損を認めると言っても、借金の状態になることを認めるFX業者はありません。有効証拠金が必要証拠金の50%を下回ったら強制ロスカットにするなど、各社で基準を決めています。
どちらの基準が望ましいか
では、各社で異なる基準ですが、どの基準が望ましいでしょうか。安全という面では、「有効証拠金が必要証拠金に満たなくなったら、すぐに強制ロスカット」の方が優れています。
一方、高レバレッジで積極的に攻めるトレードをする場合、多少の猶予があるほうが助かるでしょう。
よって、自分のトレードスタイルやリスク許容度と相談しながら、決めることになります。
マージンコール
なお、実際に強制ロスカットになる前に、証拠金が一定の水準を割り込んだ時点で警告が届く場合があります。
この警告は、追加証拠金を要請するメッセージであり、『マージンコール』といいます。マージンコールの制度がないFX口座もあります。
マージンコールへの対応
マージンコールを受けた投資家は、追加の証拠金を差し入れるか、ポジションを減らす必要があります。放置すると、FX業者は強制ロスカットする可能性があります。
マージンコールが発動されたら?
実際にマージンコールが発動された場合、取引画面上にマージンコールが発動されたことを示すメッセージが表示されます。メールによって通知が来ることもあります。
マージンコールが発動された場合、FX業者が指定する時刻までに、以下のいずれかを実行しなければなりません。
- 追加で必要な証拠金額を入金する
- マージンコールを消すのに十分なポジションを決済する
どちらを選択するかは自由です(両方でもOK)。
マージンコールが発動された場合、もう一度他のポジションやレバレッジを見直すなど、戦略を立て直してみることも必要です。
主なFX業者の基準
最後に、各FX業者の強制ロスカット基準を確認しましょう。この基準が活躍しなくても良いように、資金管理をするのが重要です。
なお、下の表で「証拠金維持率」が出てきます。これが意味するのは、以下の通りです。
証拠金維持率100%:
有効証拠金(含み損を反映した実質的な証拠金額)が、必要証拠金額と同額である。
証拠金維持率50%:
有効証拠金が、必要証拠金額の半分になっている。
100%を割り込んだら強制ロスカットになるという場合、レバレッジ25倍越えは許しませんよ、ということです。
100%を割り込んでも猶予がある場合は、一時的にレバレッジが25倍よりも高くなります。
なお、100%未満の数字でもOKという場合でも、永続的に100%未満でポジションを持つことはできません。
1日の特定の時刻において、必ず100%以上にしなければならないルールだからです(全FX業者で共通です)。
よって、証拠金維持率が100%を割り込んでしまった場合は、できるだけ早く100%よりも高くしましょう。でないと、強制決済されてしまいます。